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——まるでそこに撮影者がいないように、被写体である人々は存在しています。あなたは、いったいどのようにして「カメラを消した」のでしょうか?
GR(ジャンフランコ・ロージ監督) 実際に撮影が開始されるまでには長い、長い時間があったんだ。とても長いプロセスだった。
私自身がカメラを持って撮影しているわけだが、基本的に私は「カメラで撮影する」という行為が嫌いなんだ。なぜなら、打ち解けていた相手でも、ひとたびカメラを取り出した瞬間に変わってしまうからだ。カメラがあることで、私と彼ら(被写体)の関係が突然変わってしまうのさ。
だからこそ、実際に撮影を始める前に私はとても、とても長い時間をかけて、(被写体である)彼らと時間を過ごす。彼らをよく知るために、そして、彼らに私という人間をよくわかってもらうためにね。彼、彼女が、いったいどのような人間なのか、何に興味を持っているのか、どんな哲学を持っているのか、何が嫌で何が好きなのか、どんな瞬間にどのような表情をするのか……。カメラを回す以前、そういった知識を得るために、たくさんの時間が費やされる。とにかく「人と人との関係」を築かなければならない。
そのようにして、充分な信頼関係が築き上げられた上で、初めてカメラを回し始める。そのとき彼らは初めて、私の映画のキャラクター=役者になっている、というわけだ。だがそれも、真に信頼し合える関係性が築き上げられたときのみ起こりえることだよ。簡単なことじゃない。彼、彼女が私を心から真に信頼できるか、私が彼、彼女を心から真に信頼できるかどうか。それこそが一番大切なことだ。
——では、最初はまったくカメラを回さない、撮影しないで、すべてを始めるわけですね?
GR 最初は何も撮影しない。私がいて、彼、彼女がいるだけだ。私にとっても、彼、彼女のことをきちんと知らなければ、どこにカメラを置いてどのように撮ればいいのか、わからないだろう。正しい場所で正しい瞬間にカメラを構えるためにも、まずは相手をよく知らなければならないのさ。
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