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Dialogue

山口智子×鶴岡真弓
縄文への旅


長野県井戸尻考古館を訪ねる

未来に伝えたい世界の文化を、
美しい映像と音で綴る「LISTEN1001」シリーズを
作り続けている山口智子。
ケルト文化を中心に、文様に秘められた
人類史を探る美術文明史家の鶴岡真弓。
文明発祥の鍵を握り、
東西文化のクロスポイントである
中央ユーラシアからバルカン半島へ、
そして西の極みのイベリア半島……。
遥かな点と点を結び、私たち日本人のルーツに
繋がる人類の出会いの証を二人は追いかけてきた。
先人の叡智に思いを馳せ、
世界の古代文明やアートを探るほどに、
浮かび上がってくるもの……、
それが日本の縄文文化だと二人は語る。
古代の文様に秘められた、
現代人が今こそ学ぶべき宇宙観を知る。

日本の縄文文化を辿る

山口
昨年訪れた中南米の文化に、強烈な懐かしさを感じました。それは日本人の源流に繋がる懐かしさです。岡本太郎さんが発した、縄文再発見の言葉が心に蘇りました。出会った人々の生命体としての美しさ、生きぬく気概と奔放な再生の力に、脈打つ縄文の渦文様が重なりました。脱皮しては生まれ変わる、蛇の蘇りの力を象ったかのようなダイナミックな縄文文様。日本人の中に渦巻く縄文パワーが、地球の反対側の遥かな地に今も息づいていることに胸がときめきました。
鶴岡
人間は愚かな部分もあるけれど、決して失ってはならないものに対しては直観があるもの。それは生命への直観と呼んでもいいかもしれない。
山口
躍動感溢れる縄文の象りの根源は、いったいなんなのでしょう?
鶴岡
縄文の人々は生命の本質を理解し、そうした感覚をみんな共有していたのかもしれませんね。たとえば井戸尻考古館(長野県諏訪郡富士見町)の縄文土器。「蛙」や「蛇」の文様が数多く見られます。月の満ち欠けによる祭事の歴史が刻まれていた。数千年前の人々が現代人よりも、複雑で精緻な宇宙観を持っていたことを渦巻き文様や蛙の図像が証明しています。
山口
微生物のようなものから蛙や蛇、まるで進化論のような図像に驚きました。鯨のような龍のような……謎の水棲動物らしき形もありましたね。縄文人は、大海の神秘への地球規模の知恵にも長けていたのかもしれません。蛸の足状のものが絡み付いた、まるで地球外生命体のような神像筒形土器も心に残りました。妖気漂う螺旋に命を吹き込まれた土器、その内なる闇から縄文人は新たな何かを生み出していたのでしょう。縄文図像研究家の田中基さんが、土器文様は月光の再生と結びついていると語ってくださいました。蛙文様の両腕が描く螺旋が、一カ月の月の満ち欠けの軌跡と合致しているという論説。宇宙の力を受け取って命を再生させる秘法を、縄文人は会得していたのではないかと想像は膨らみます。
鶴岡
つねに縄文人は、いのちの「再生」を祈りつつ土器文様を表していたと思えます。無意識の中で生命の本質を直観し、土器という生命の母体にして容器に、まさに生命の夜明け前のような希望と期待に満ちるエネルギーを表しました。いのちの誕生の秘密をみんなが知っていたのですね。

繋がる神話

鶴岡
井戸尻考古館で展示されている縄文土器「」が印象的でした。太陽と月である神様の眼玉が世界に落ち出ることによって秩序ができたという神話があり、あの土器の穴はその太陽と月を意味する眼玉が落ちた後を表現していると田中さんはおっしゃっています。私はあれを見た時に、縄文人はある種の儀礼を行なう際に、本当に実際に「光を落とす」ということを儀礼の中でやっていたのではないかと想像しました。火をあの穴に落としたり差し込んだり、そうしたアクションをすることで儀式に集まっていた民がわっと燃え上がったのでは、と。それは光る石や何か生命に満ちた植物の実だったかもしれませんね。
山口
「穴」という「無」であり「闇」の部分が、縄文人には重要な意味を持っていたということが今回の大きな発見です。土器を見る位置によって、双眼の穴が作り出す陰影が変化し、まるで満月や新月の闇を表す動画のようにも見えました。文様だけでなく「陰影」を読み解くことで、宇宙から届く光を巧みに生かして、再生エネルギーへと転換させようと願った縄文の叡智が紐解ける。それは、闇の力を忘れた現代人が直面する壁を、打ち破る術かもしれませんね。
     

山口智子

2010年より、未来に伝えたい世界の美しい音楽や映像を収めた『LISTEN 1001』(BS朝日)シリーズを制作する。今年も新作4エピソード放映予定。

鶴岡真弓

多摩美術大学教授、芸術人類学研究所所長。西はアイルランド、スコットランドから、東はウクライナやシベリアまで「ケルト文明」および「ユーロ=アジア世界」を貫く伝統・民族の「装飾・デザイン」交流史を調査・研究。主著に『ケルト/装飾的思考』(ちくま学芸文庫)、『装飾する魂』(平凡社)、『阿修羅のジュエリー』(イースト・プレス)、最新刊に『ヨーロッパの装飾文様』(東京美術)など多数

井戸尻考古館

石器の研究を中心とした「縄文農耕論」の検証と、縄文土器の文様から当時の精神世界を読みとくことを展示の軸に、縄文時代の生活や文化を再現。長野県宝「水煙渦巻文深鉢」をはじめ、日本の原始美術を代表する縄文中期の土器群は必見。長野県諏訪郡富士見町境7053
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