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Dialogue

国境を越えるオタクたち


綿矢りさ×ジュノ・ディアス
都甲幸治(モデレーター)
Risa Wataya × Junot Díaz
Koji Toko (moderator)

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text by Saito Makiko photographs by Omori Katsumi
日本のオタクカルチャーと中南米文学のハイブリッド小説ともいえる
ジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』。
日本と海外のオタクに違いはあるのだろうか。
恋に不器用な主人公を描いてきた綿矢りさと語る、「オタクのための恋愛入門」のはじまり。

東京を愛するという感覚
オタクを受け入れる米国

綿矢
 ジュノさんが東京についてニューズウィーク誌に書かれたエッセイがすごくいいお話で、お聞きしたいと思っていたのですが、都市への愛について考えてこられたのは、小さい頃に故郷のドミニカ共和国を離れてアメリカに移住されたからですか?
ディアス
 僕が育ったニュージャージはコンサバで、芸術的雰囲気のかけらもないところでした。コスモポリタンな雰囲気でアーティストもたくさんいるニューヨークは、すぐそこだったけどね。幼なじみが日系アメリカ人で、その影響で子供の頃からで東京と山形に興味がありました。妹はイタリア好きだけど、僕はイタリアに興味がない(笑)。どの都市を好きになるかって不思議だよね。
綿矢
 日本人の多くは、都市に愛を持つという感覚を持っていないかもしれません。私自身、言われてみれば、なるほどと思ったのですが……。ジュノさんはオスカー・ワオの短く凄まじい人生』のなかに、日本のアニメやサブカルチャーのことをたくさん書かれていますよね。
ディアス
 日本のポピュラーカルチャーは、七〇年代、八〇年代に子供時代を過ごした僕らの世代にはとても親しみがあるんです。アメリカのカトゥーン(漫画)に比べると、日本の作品はすごい。十歳の時に『宇宙戦艦ヤマト』を観て、ストーリーもビジュアルも洗練されていて驚いたなあ。
綿矢
 この壮大な物語はドミニカについての政治的な核心に触れる深い考察や問題が織り込まれていたり、不思議なエネルギーに満ちているのももちろんですが、ジュノさんの作品はオタクの青年への愛にあふれていて、夏の夕焼けみたいなあたたかさに包まれるところがありました。
ディアス
 りさ! そんなことないでしょう。都甲さん、翻訳間違ってないよね?(笑)だって読者からは、あなたの作品を読んで落ち込みましたというメールをもらうこともあるし。
綿矢
 ジュノさんは、オタクに対する視点は厳しいかもしれませんが、勇気や優しさというものを応援する視点があって、読んだ後に元気をいただきました。
ディアス
 自分の体験から言うと、僕が育った軍隊みたいな保守的な家庭では、オタクはあまり歓迎されるタイプの男の子ではなかった。学校へ行くとオタクはいい奴ばかりだったけどね。今はアメリカでも、アニメや漫画好きは受け入れられるみたいです。面白いのは、アメリカで男の子はある時期から男らしさ(マスキュリニティ)を極端に追求しようとして、自分の好きなものをあきらめる。そして漫画やアニメは逆にマスキュリニティをあきらめるためのものだったりするんですよ。
都甲
 マスキュリニティって、チアリーダーとデートしたりすること?(笑)
ディアス
 それも含めていろいろね。
綿矢
 この小説を読んで不思議に思ったのは、主人公の語り手がオタクのオスカー・ワオ君ではなくて、彼の友達ですよね。友達の視点でオスカー・ワオ君を描いたのはどうしてですか?
ディアス
 この二人もそうだけど、僕たちは友情の底にある深い感情を認めるのに時間がかかることがある。嫉妬だったり、話したくないものだったりする。小説のこの語り手は、「」に深い憧れがあるけど、それを隠しているんだ。それはまさに、オスカー・ワオが手にしているものだけどね。
都甲
 深い憧れってどういうことなの?
ディアス
 つまり、僕たちはいつも仮面を身につけていないといけないよね。男らしさもそのひとつだと思うけれど。オスカー・ワオはそういう仮面をつけていないんだ。
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