『光の音色』
小原孝博写真展

写真家の小原孝博が写真展を行う。
6月10日から、場所は日本橋小伝馬町の
ギャラリーだ。
タイトルは「光の音色(ねいろ)」。
今回の写真展の理由やテーマについて、
写真家自身が語った。

Photography by Takahiro Kohara
Interview & text by Coyote

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写真家の小原孝博が写真展を行う。
6月10日から、場所は日本橋小伝馬町の
ギャラリーだ。
タイトルは「光の音色(ねいろ)」。
今回の写真展の理由やテーマについて、
写真家自身が語った。

Photography by Takahiro Kohara
Interview & text by Coyote

 

5年前に弟をなくし、その翌年に父が倒れた。都内の仕事先と静岡の病院を往復する日々が続いた。身内の不幸がさらに重なりつらい年月だった。
自分の中でいろんな「影」を感じてきたと思う。いのちが失われる、ということもあるし、それだけではない。生きていく中での影というものもあった。
死に関係する出来事や、それによって生じたいろんな思いが、自分の写真についていろいろ考えさせられるきっかけになったのかなと思う。自分の写真についての考えの、ある種の転機になったというか。自分の写真とは何か? ということについて、深く考える時間が長くあった。

写真とは、光だ。
photographというのは元々ギリシャ語が語源だったと言われている。photoは光、graphは絵。あるイギリス人がその2つの言葉を組み合わせてphotographという言葉を、その当時作ったらしい。
「photographerフォトグラファー」というのは、「光の絵画師」のことなんだ。
そう考えたとき、自分が見た光を、どのように誰に伝えたいのか、ということに思い至った。写真はメッセージとか、そういう単純な構図ではない。「自分が今見ている光を、誰かの心にも伝えていきたい」ということ。それは、光の行方、なんだろうなと思う。  光とは、未来に繋がっていくひとつの道なんじゃないか。
一方、「音色」というのは、ひと言で説明するのがちょっと難しい。
僕の写真を見た人から「自然の音が聞こえますね」」と言われることがよくあった。何年か前に耳の病気になって、それまで仲間達と楽しんでいたガムランをやめなくてはならなくなり、好きな音楽も聴けなくなってしまった。でも、鳥のさえずりや雨の音、川のせせらぎとか、そういう自然の音は問題なく聞こえたし、いままでよりむしろ心地いいものになった。
写真を撮るときには、その場の自然の音を聞いていたい。川を撮るときには川の音を聞いていたい。音からくるインスピレーションはさらに鋭くなってきた。自然のざわめく音が新しいアングルを運んできてくれる。音のした方向に反射的にカメラを向けるようになった。音はまさに音楽。
そう考えると、僕の写真には音が潜在的にあるのかもしれないなと思った。「光と音」は、一緒に存在し、お互いを補い合うものなのかもしれないと思えるようになった。
「光の音」というタイトルも考えたのだけれど、「音色」といったほうが倍音になるのかなと思った。複数の音になって、メロディというか物語になって聞こえてくるような気がした。そして、それを望んだ。

写真とは、強く何かを表現しようとすると、結局「そのもの」しか伝わらない。でも、それをやさしくすると、そこに余白、余地が生まれ、そこから、見る人が「自分を考えていける」のだと思う。だから僕は、断定的な写真よりも、そこから発想させていく写真が好きだし、そういう写真を、作品を、作り続けてきた。「発想のお手伝い」というのも、今回の写真展のテーマのひとつかもしれない。

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Photography by Takahiro Kohara

『光の音色』小原孝博写真展
アイアイエーギャラリー 中央区日本橋小伝馬町17-5 7ビル1F
2014年6月10日(火)〜22日(日) ※月曜休み
12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
入場無料

小原孝博
1962年3月15日静岡県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、文藝春秋写真部勤務を経て独立。その後マラドーナを追ってヨーロッパや南米に。MLBを撮りに北米へ。1989年からインドネシア、バリ島に通い始め、写真集『オラン・バリ』刊行。多誌で活躍、単行本の表紙、ポートレイト撮影なども。