RED OBSESSION
『世界一美しいボルドーの秘密』

「ボルドー・ワインの今を描くことで、現代の世界経済における中国の位置やエネルギーを表現することができるとも思ったんだ」
ロス監督はインタビューでこう語った。
「ぼくも最初は、これほどすごいことが起きているとは思っていなかった。けれど、リサーチを進め、撮影を始めると、ボルドー・ワインと中国のコレクターたちの関係は、想像を超えたものだった。中国の富裕層にとって、高級なボルドーを手に入れることは、高級ブランドのバッグや時計を手に入れるのと同じなんだ。それは、ステイタスであり、自分のリッチさを誇示するものなんだね。いつしかボルドーは、ブランドになってしまったんだよ」
監督もまた、オーストラリアでワイナリーを経営し、「ぼくはワインが大好きなんだ」と語るワイン愛飲家だ。ショッキングな部分もあるドキュメンタリー映画としては充分に面白いこの作品だが、正直「ワインを愛する者」として、どう感じているのだろうか。
「ワインは飲んで楽しむものだ。本来ワインは、大切な誰かと一緒に飲み、その時間や空間を分かち合うためのものなんだよ」

映画は、ボルドーのシャトーでずっと倉庫に保管されたままでいる高級ワインの姿も紹介している。一部のワイナリー経営者、シャトーの主たちは、そのワインの値がもっと上がり、「最高値をつけたときにこそ売りたい」と目論んでいるのだ(もちろん、そうは考えない醸造家やシャトーも存在することを映画はまた伝えている)。中国のコレクターだけではなく、ワインを造る側=フランスのワイン醸造家やシャトーの側にも、深い欲望が渦巻いていることを映画は見せる。
そう、まさに、「赤の欲望に取り憑かれた人々」の姿が、ここにはある。

『世界一美しいボルドーの秘密』
http://www.winenohimitsu.com
監督:デヴィッド・ローチ、ワーウィック・ロス
ナレーション:ラッセル・クロウ
9月27日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー。
©2012 Lion Rock Films Pty Limited