『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』

『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』
「旅」と「写真」という、これ以上ないほどシンプルな、しかし切っても切れない関係にあるものをテーマにした本、『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』。旅をメインフィールドに活躍する写真家たちによる鮮烈な写真とエッセイ、そして彼らへのインタビューから成るアンソロジー。巷に氾濫する「絶景本」とはひと味もふた味も違う、旅人たちの真摯なまなざしが捉えた旅のリアルが詰まった一冊だ。
文/山本高樹
text by Yamamoto Takaki


雄大な虹の下で牛車に干し草を積み込む男 
ミャンマー 撮影:三井昌志

 旅と写真についての本を作りたい。誰よりも、自分自身がその本を読んでみたい。
僕が本を作る時、そのアイデアはいつも、とても単純で個人的な思いから生まれる。でも、本とは本来、そういうものであるべきだ。個人的な思いから作られた本にこそ、人の心を動かす力が宿るのだと、僕は思う。
『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』という本には、十数人の写真家と旅人が登場する。世界と同時に自身の内面とも苛烈に向き合いながら、何年も放浪を続けた人。バイクを借りて見知らぬ土地を走りながら、人々との煌めくような出会いを重ねてきた人。各駅停車のローカル線の座席に身体を沈め、途方もなく自由でゆるやかな旅に浸っていた人。それぞれの人に、それぞれの旅があり、それぞれの写真がある。
なぜ旅を、なぜ写真を始めたのか。なぜ続けるのか。それはあなたにとって何なのか。一人ひとりに取材をして話を聞く時間は、インタビュアーとして、そして同じように旅と写真に惹かれる者として、本当に愉しいひとときだった。彼らが見せてくれる写真には、その地を旅した者だからこそ捉えられる光と影と、言葉にはうまく置き換えられない、でも確かに感じ取れる大切な何かが込められていた。そこにはまぎれもなく、彼らの旅そのものがあった。
写真など撮らなくても、旅は愉しめるものなのかもしれない。その地を訪れ、人々と出会い、自分の目で見て、感じ、心に留める。僕も、旅ではそれが一番大切だと思う。でも、カメラを旅の良き相棒にして、行く先々で出会う人々や出来事、心を揺さぶる一つひとつを写真に収めていくと、旅の記憶はずっと豊かで深いものになることも確かだ。そしてその記憶は、写真に載って広がっていって、時には、誰かの人生をちょこっと動かしてしまうことさえある。
旅には、写真には、ほんのささやかなものかもしれないけれど、何かを伝え、動かし、変えていく力がある。独りよがりな思い込みかもしれないが、僕はそう信じている。

スピティにあるチベット仏教の僧院、キー・ゴンパ 
インド 撮影:山本高樹

 


遊牧民ボロロ 
ニジェール 撮影:竹沢うるま

 

ウダイプルの女性たちによるメワール祭 
インド 撮影:鮫島亜希子

『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』に登場する人々

旅音(インドネシアのボロブドゥール遺跡、バリ島)
三井昌志(バイクで旅したミャンマーの農村風景)
竹沢うるま(アフリカの奥地、ニジェールとマリの人々)
藤木ケンタ(ボリビアのウユニ塩湖、パタゴニアなど)
松尾純(西チベット、聖山カイラスの巡礼者たち)
中田浩資(中国、東南アジア、サハリンを巡る鉄道旅)
角田明子(エストニア、キヒヌ島の人々)
鮫島亜希子(インド、ウダイプルの女性たちの祭り)
関健作(ブータンの学校で学ぶ子供たち)
高橋良行(スリランカの人々の素朴なポートレート)
松尾太士(アメリカ、雄大な国立公園の風景)
長綱淳平(アメリカを車で気ままに旅した記録)
新山貴之(スペイン各地の街並とフラメンコの舞台)
寺本雅彦(冬のアイスランドの風景と人々)
山本高樹(ヒマラヤの高地スピティを踏破する旅)
吉田友和(旅と写真にまつわるインタビュー)
森本剛史(旅と写真のおすすめ書籍の紹介)

キヒヌ島の夏至祭でキャンディを頬張る女の子 
エストニア 撮影:角田明子

『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』
編者:山本高樹
価格:1,600円+税
発行:(株)ダイヤモンド・ビッグ社
B5判128ページ(オールカラー)
ISBN978-4478046159
配本:2014年7月25日(金)


『撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち』刊行記念トークイベントが行われます。
「絶景だけが、旅じゃない。写真は旅を、もっと面白くする」
出演:三井昌志、中田浩資、森本剛史、山本高樹
日時:2014年7月29日(火)19:00〜20:30
会場:代官山蔦屋書店1号館2階イベントスペース
主催:代官山蔦屋書店
協力:(株)ダイヤモンド・ビッグ社
お問い合わせ:03-3770-2525
詳細:http://tsite.jp/daikanyama/event/003934.html