大きな出来事のあとに

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 2012年3月に日英米で同時刊行されたアンソロジー『それでも三月は、また』。企画と編集を手がけたのはエルマー・ルークと辛島デイヴィッド。
「そもそもは英米の出版社から『震災後の日本の作家の言葉を聞きたい』という声があり、日本財団のRead Japan Programの一つとして始まりました。小説でもノンフィクションでもいいので、今響く言葉で書いてください、と作家のみなさんにお話ししていきました」(辛島))

執筆陣は、谷川俊太郎、多和田葉子、重松清、小川洋子、川上弘美、川上未映子、いしいしんじ、J.D.マクラッチー、池澤夏樹、角田光代、古川日出男、明川哲也、バリー・ユアグロー、佐伯一麦、阿部和重、村上龍、デイヴィッド・ピース。

右から日本版(講談社刊)、米国版、英国版。英題は『March was Made of Yarn』(「三月は毛糸からできていた」を意味する)。
収益の一部は震災復興のために寄付された。)

「惨事のあと、惨事のまえ」は芥川龍之介の時代に遡って、1923年に起こったことを書きました。
歴史を垣間見ることで、彼が震災とどう対峙したのかを書きたかったのです。(ピース))

私がひとつ大きく惹かれているのは、心の傷、トラウマです。
それは脳の中に刻まれた小さなスペースかもしれませんが、なかなか逃れられないものです。(フォア))

これまでになかったような現在に、失われてしまった震災前の世界を書いたり読んだりして、
それを保存することは、ねじれが生まれることだと思うのです。(川上)

デイヴィッド・ピース

1967年英国生まれ/2003年、「グランタ」誌が選ぶ若手イギリス作家ベスト20に選ばれる。第二次大戦後の日本で起きた事件を通して戦後の日本を描く『東京三部作』を順次刊行中。現在までに『TOKYO YEAR ZERO』『占領都市 TOKYO YEAR ZERO II』が刊行されている。

川上未映子

1976年大阪生まれ/小説家。

ジョナサン・サフラン・フォア

1977年ワシントンDC生まれ/小説家。

柴田元幸

1954年東京生まれ/翻訳家。ポール・オースター、トマス・ピンチョンなど現代アメリカの重要作家の作品から、ジャック・ロンドンやアーネスト・ヘミングウェイまで翻訳書多数。