ノースショアに住む
自然観察者たち その1

Gerry Lopez
ジェリー・ロペス
【大きなマンゴの木の下で】

ジェリーは現在オレゴン州のベントという緑に囲まれた景観のよい丘陵地に住む。なぜノースを離れたのだろうか。その理由を訊くとジェリーはこう言った。
「私の息子の名前はアレックス・サブロウ・ロペスという。サブロウは叔父のイタクラ・サブロウからいただいたものだ。大好きな叔父だった。祖父がワイメアに映画館を建て、サブロウが支配人をしていた。日系人ということもあって毎週金曜日は日本の映画を上映していた。それを弟とよく観に行った。私の記念すべきファーストボードはサブロウがくれたものだ。フィンがないショートボード。その叔父も映画館もなくなってしまった」
映画館は少年にとって成長を促す大切な場所、ジェリーは最初に東洋の精神を学んだのは日本映画だったという。ハレイワ映画館は、今はマクドナルドになっている。ならばあなたが映画館を作ればいい、子どもたちのために。そう嘯いた。
「そう、でもノースは人が増えすぎた。はじめの頃は人の波に後乗りする奴なんて一人もいなかった。ルールははっきりしていた。一番うまい人が好きな波に乗れる。そのために人は練習する。うまい人の乗り方を見て教わる。自分への励みだった」
ジェリーはそれを“ペッキングオーダー”と表現した。「でも人が増えるとけんかの強い奴がいい波に乗れる、地域の縄張り意識も生まれた。人に対してアグレッシブな人は長くは続かない。サーフィンもバランスのとれた人間性が大事なんだ」
私はどこにいても一生サーフィンを続ける。ジェリーは「それが私の好きなことだから」と言い添えた。

『Coyote』No.52「ノースショアに暮らす」より