枝元なほみの食べごしらえ
「天草、手のひらの王国を行く」

天草で漁師のおかみさんに出会った。
美味しい魚は透明な肌をしている。見れば分かると言う。
透明度を曖昧にしてしまったのはビニールパックであり、
魚一匹丸ごと求めない私達の食生活のせいだ。
農家のおかみさんにも出会った。
唐芋のこっぱのかけ干しを一本いただいた。
そのままかじっても味はなかった。
急がずに手間をかけて水で戻し、
それを一晩つけて蒸して、臼でつぶし、
蒸したもち米と混ぜていく。
板にきな粉を曳いてのしもちにして焼いた。
枝元なほみは天草の食事に魅かれていた。
潮の流れや季節によって豊富な漁場となる海がある。
森に分け入り木の実をもいで畑を耕し作物を植える。
自然の幸がめぐみとなって人々の暮らしを支えている。
食べ物の背後には暮らしがあり、自然とともに故郷がある。

料理=枝元なほみ / 写真=白木世志一 / 文=新井敏記

牡蠣の時雨煮ご飯

牡蠣にたっぷりの生姜を加えて、酒とミリンと醤油で煎り煮し、汁とともにご飯にのせて、最後に一味唐辛子を振っていただく。

きびなごのなます

手で三枚下ろす方法を天草では「尾びき」と呼ぶ。
酢の代わりに橙のしぼり汁と塩でしめてキュウリを合える。

マテ貝の醤油炒め

貝の身を取り出して椎茸とともにニンニクとバター、
醤油の風味で炒める。刻んだわさび菜をたっぷりかけていただく。

芝エビの唐揚げ

塩水ですすいだエビの水気を抑えて粉を振り、
殻付きのまま揚げて塩と胡椒、好みのスパイスをまぶす。

蒸し穴子

サッと蒸しした穴子にトマトと新タマネギの組み合わせ。
オリーブオイルと醤油、橙の汁でドレッシングを添えてサラダ仕立て。