Photographer’s Appetite/写真家たちのおかえりごはん

その1<チーズバーガー>
文と写真 石塚元太良

 毎夏、撮影の為に訪れるアラスカでは、数ヶ月の間、ひどく単調な食生活を送っている。特に街を遠く離れ、荒野での撮影になったらその傾向は顕著で、終日の移動とテントの設営に大判カメラでの撮影にと、献立を考える余裕が全くなくなってしまう。そんなとき僕は機械的に以下のようなメニューを繰り返し拵える。美味しく、かさばらず、どこでも食材が手に入る献立である。
まず昼食なら茹でたパスタに、缶詰のオイルサーディンを混ぜるのみ。夜には米を飯盒で鮭の切り身と共に炊き、インスタントのみそ汁を添えるだけ。鮭の切り身は残念ながら、自身で釣ったものにあらず。冷凍の真空パックのものか、保存の利く薫製ものである。夜炊いた米は余らせておき、握り飯を作っておく。味噌を塗って焼きおにぎりにするもよし。その握り飯が大切な朝ご飯である。とにかく簡単に食事をすませることが肝要で、唯一の贅沢は森の中へ、デザートのベリーを収穫にいく。これが大切な天然ビタミン源でもある。
肉体的にも精神的にもメタボリックな都会の生活では、そんなストイックな食生活にさえ憧れをおぼえるものである。そしてアラスカの荒野では今度は、ダイナーに駆け込んでジョッキのビールにチーズバーガーをほおばることを夢想するのだ。