秋田、受け継がれる味覚

秋田の味噌は
米麹の割合が高い

こだわりの技と歴史を受け継ぎ守りながらも、時代に合わせた“進化”を追求している安藤醸造。代表取締役社長・安藤大輔さんは「味噌は調味料だけど、食材でもあるんですよ」と教えてくれた。
「味噌は、アミノ酸が豊富で旨味や甘みがたっぷり含まれている。タンパク質、糖分が豊富なんです」。その証拠に、安藤醸造の味噌はお湯で溶いただけでも十分に旨味が感じられる。塩辛さは程よく薄くなるが、味噌本来の味わいはしっかりと残る。出汁を使わずとも、しっかりした「みそ汁」だ。

「私たちは昔から続けている天然醸造を守り続けています。おいしい商品を作るために必要な材料をしっかりと使い、安く作ることはしません。また、味噌も醤油も発酵食品ですから、じっくりと時間を掛けて醸造することで味に深みが生まれます。長い経験を積んだ杜氏(製造責任者)が状態を見極め、ふさわしい時間を持たせる。杜氏が管理できる範囲で製造するため、大量のロットでは作りません。これらを基本にして技術の習得に長年時間をかけて積み重ね、製造しているのが私たちの特徴です。
ただ、求められるものは時代とともに移ろい変わっていくもの。たとえば秋田県では高血圧・脳疾患の原因として味噌・醤油・漬物の摂りすぎが指摘され、業界としても減塩化に取り組んできました。もちろん私たちも減塩化商品の開発を行ってきました。それでもベースとなる『安藤醸造の味』は変えていないんです」

 かつては各家庭で作られていた味噌だが、最近では家庭で作る人は減ってしまった。秋田味噌は全国的に見ても、米麹の割合が非常に高い贅沢な味噌だ。米麹をたっぷり入れ、じっくり熟成させた味噌はとても色が濃い。見た目で「しょっぱそう」と敬遠する人もいるが、口に含めば芳醇な香りと、まろやかな味わいが感じられる。秋田人は、具沢山のみそ汁を好む。それは、米麹をふんだんに使い、ゆっくりと熟成させた味噌が具材の味を引き立て、より深みをもたらすからではないか。これはみそ汁だけではなく、秋田で愛されるさまざまな郷土料理で言えることだ。料理の影の立役者として、旨味や甘みを与え、秋田らしい味わい深さを作り出す。まるで魔法をかけるかのように。