Coyote meets Patagonia
ヴェンチュラ、リノ。パタゴニア取材日記。

第2便<リノ>

9月発売の『Coyote』では、世界的なアウトドア・メイカーである「パタゴニア」を大特集する。現在、ネヴァダ州リノ、カリフォルニア州ヴェンチュラ、ワイオミング、ハワイの4つの場所で、Coyoteの取材が行われている。

文&写真=今井栄一 text & photography by Imai Eiichi
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【環境への負荷を最大限に下げた社屋】

およそ150人のスタッフが常勤するパタゴニアの「リノ・サービスセンター」が完成したのは、1996年6月。その後、建物は一部拡張され、現在に至っている。ネヴァダ州リノの町中を流れるトラッキー川、その上流の川沿いに、その大きな建物はある。
建物の表側の一角に、パタゴニアのアウトレットショップがある。サービスセンターとオフィスへ入るには、建物の裏側へ回り込む。裏へ回ると、そこはトラッキー川の川沿いで、樹木が並び、鮮やかな緑が風に揺れている。車を停めて外に出ると、川の流れる音が耳に響いて心地いい。

川からすぐのオフィス入り口へ向かっていくと、木立の隙間に太陽光パネルが見える。このセンターは、「環境に負荷をかけることを可能な限り抑えた」建築物として知られている。「エコ・ビル」と呼ぶ人たちも多い。完成時に高い評価を得て、その後も世界中から、建築家や倉庫の管理関係者らが見学に訪れるという。

センターの中心部に入ると、高い天井に無数の天窓があり、電灯は必要最低限しか点けられていない。稼働していない場所は完全に電灯が消されるし、人がいないと自動的に消え、人がやって来ると点くというシステムになっている。
リノは乾燥した砂漠気候の町で、夏の日中の気温はときに摂氏40度を超える。だが、一部の場所をのぞいて、ここでは可能な限りエアコンは使わないようにしている。ナイト・フラッシュ・シテスムという方法が取り入れられているという。砂漠地帯の特徴として、日中は暑くなるが、夜はぐっと気温が下がり、寒いくらいになる、ということがある。その特徴を生かしたのが、ナイト・フラッシュ・シテスムだ。夜間のうちに冷えた外気を内部に取り入れ、同時に、日中温まった空気を外へ出す。このように夜間を通して空気を入れ換えることで、あとは断熱材の活用によって、エアコンの不要な工場を作り上げたのだ。