ノースショアに住む
自然観察者たち その2

Mark Cunningham
マーク・カニングハム
【魔法のような化石のフィンの森】

ノースショアの魅力を改めて彼に訊ねた。
「2つある。自然の美しさ、そしてコミュニティの良さ。とても面白い人達が住んでいるんだ、サーフィンを通して知り合った友達、隣人、一緒に仕事する人達と、とてもいい付き合いをしてる。僕は本当に恵まれていると思う。サーフィンが地場を提供するように人が交流する。私自身がそんなに旅ができない代わりに世界中から来る人と出会える、素晴らしいことだ。青空と白い砂浜、雨雲が動いて、虹が出て、クジラもイルカも泳ぎ、冬には高波もやってくる。ノースショアは素晴らしいところだ」
ライフガードとして、ノースショアを見続けた中で起こった変化を訊いた。
「他の世界と同じで、人が増えたことかな。私が初めて来た頃にはテレビもケーブルも、携帯やコンピューターといったテクノロジーもなくシンプルな生活だった。朝早起きして陽があるときに仕事して、夜は眠る。今はパイプラインの波乗りの写真をネットで見られるし、ノースショアの情報も別な場所で瞬時に知ることができる」
「ではなぜ皆がノースショアに行きたがるのか?」ケイティが呟くようにマークに訊ねた。
「体験したいのだと思う。ノースショアのアイデンティティは昔も今も変わってはいない。しかし前より人は増えたし新しい家もできた。でもまだ高層ホテルや地下鉄が通っているわけじゃない。ワイメアの渓谷には緑深い森があり、シンプルな家もある。ノースショアに住む人たちだけではなく、ホノルルに住む人たちもノースショアはカントリースタイルをキープすべきだと思っている。この島の政治家に言いたいのは、もっとこの島を良く、観光客にとっていい島にして欲しい。渋滞続きの交通網にはイライラするし、ビーチのシャワールームは相変わらず汚い。ゴミが落ちていたり落書きがあったりするのを見ると、恥ずかしくなるんだ。ネットの普及でたやすく予約ができノースショアはバケイション用のレンタルハウスばかりになった。ハイシーズン時、世界中のサーファーのためにローカルの人は空いた部屋や家を貸す。そして連日パーテイが繰り広がられる。それらをきちんと管理するべきだと思う。ハワイはどの州とも比べられない魔法のような特別な島なんだから。この島が素晴らしくて美しいということを誇りを持ってほしい」
少しの沈黙の間、ケイティはキッチンに飲み物を取りに行った。
 

 
僕は質問を変えてライフガードについて訊いた。
「ライフガードは特別なウォーターマンとして憧れの存在です。実際エディ・アイカワをはじめレラ・サンなど伝説な人も多い。あなたもその1人です。ライフガードとして一番大事なことはなんだと思いますか?」
ゆったりとカウチに腰かけながら、マークは答えていった。
「ライフガードを愛しているということです。美しいビーチで仕事ができることを誇りに思い、幸せに思わないといけない。人の助けになるという職業はすばらしいと思わないかい。警官と消防隊員と同じだ。違うのは私たちの制服は水着とTシャツというところだけ」
ケイティもその言葉に頷いてこう言い添えた。
「ライフガードにとって大事なのは予防することだとよく言っていたわね。これから波に乗ろうとするサーファーに「君が思っているほどこの波はたやすくないよ」と伝えることは、真の教育だわ」
「アロハの精神は愛、そして互いに助け合うということだと思っている。海を毎日見ていて、誰かが危ない時にまれに笛を吹くけれど、それ以外は哲学的に物事を考えている。何と恵まれているんだろうと思うよ」
マークが笑みを浮かべながらケイティに伝えるようにこう続けた。
「皆にビーチで楽しんで欲しい。だから皆が困るようなことは言いたくないししたくない。でも高波の日は泳ぐのは危ないよと言わないといけない」
「広告では”Go to the Beach”と誘っているのね。ハワイのビーチがもっと素敵で綺麗に、安全になって欲しい」ケイティが願いを込めて言う。