ノースショアに住む
自然観察者たち その3
Kohl Christensen
コール・クリステンセン
【ノースの痩せた赤土を耕して】

「あそこに小屋が見えるだろ、あれは全て廃材で作ったんだよ」
コールの指差した方向を見やると「サウスシャック」と彼が呼ぶ特設のカウンターバーの小屋があった。
「シンプルな作りだろう」
コールは自慢気に語る。「冷蔵庫や照明器具、全てソーラーシステムでまかなっているんだ」
そう言うとコールは、冷蔵庫から水が入った浄水容器を取り出し、コップに注ぎながら言葉を続けた。「この水も裏手に井戸を30メートル掘って、そこから汲んでいる。ソーラーでポンプを汲み上げるために、500ドルかけてソーラーパネルを造ったんだ。だからいつでもお湯はタダ」
「この土地はいつ手に入れたの?」
「土地の広さは三エーカー、5千坪の敷地を誇っている。2007年、すぐに自分たちが住む小さな家を建てた」
「自分たちって?」
「弟と妹との3人。ロングボードをシェイプするためにスタジオを建てたのが2009年。2階建てにして上は友人に貸している。家賃収入が僕の旅の元手となるんだ。賢明だろう。ここ以外にもハレイワの麓に1エーカーほどの土地を持っていて、そこに僕たちの新居を建てるんだ。この6月、僕はサラという女性と結婚をするんだ。挙式はここでする。よかったら君も式に来ないか。泊まるところもここにはあるよ。いつかこの農園で宿泊も受け入れるつもりで中古のテントを譲り受けたんだ。そのテントが3棟あってけっこう居心地がいいと評判なんだ。後で君にも見せるよ。いつか日本の観光客を受け入れて農園の体験やサーフィン、峡谷をバックにしてヨガ教室もしたい。最高だと思うけどな」
今日初めて会った人間を結婚式に誘うなんて、彼の人間的なスケールははかり知れない。よっぽどのお人好しか。でも社交辞令と受け止めよう。