ノースショアに住む
自然観察者たち その3
Kohl Christensen
コール・クリステンセン
【ノースの痩せた赤土を耕して】

農園の片隅に泥で作られた釜があった。焼き物でもするのかと思い訊ねてみた。
「そのつもりだった。でも上手く火が回らなくて今では焼却炉になっている。僕のご近所さんが馬を持ってるんだ。乗りたくないか? やりたいことがあったら遠慮せずに言ってくれよ。残念だったよ、サラを迎えに行く用事がなければ、今夜ブタの丸焼きを君にごちそうできたのに。あそこに大きな岩がゴロゴロしているだろう。料理用の岩さ。焼いた石を土の中に入れてバナナの葉を引き詰めてブタを一頭丸ごと蒸し焼きにするんだ。星空の下で食べる。最高のもてなしだ。次に来るときにはホノルルなんて泊まらないでテント泊をしてくれよ。結婚式の時にはここはナイトクラブになる。そうそう、今月モロカイ島でイノシシの猟をするけれど来ないか?」
その時、遠くから女性の声がした。コールは「妹だ」と言って紹介をしてくれた。
「今は同じ小屋に住んでいるんだ。後でその小屋を見せてあげるね」
「スターみたいね」妹が冷やかすようにコールに言った。
「日本の雑誌のカバーになるんだ」そう言うとコールは満面の笑みを浮かべた。表紙になることをこんなに素直に喜んでくれるなんていい奴に違いない。
「スタジオにあったマウイ島のジョーズ用のロングボードを持って撮影しようか」「ほとんどがグラスで重いけれど、どこでもいいよ」
峡谷を見下ろす大きなデッキテラスが眺めのいい場所にしつらえてある。なるほど、朝夕ヨガ教室をするには最適な場所だった。彼はロングボードを抱えるようにしてデッキに運ぶ。
「毎日朝5時半に起きてこのデッキでヨガをするんだ」コールが言う。
振り返ると北の方角にはハレイワが見えた。ノースショアの海が両手で掬えるような気がした。風が強く白い波がウサギのように立っていた。