ノースショアに住む
自然観察者たち その3
Kohl Christensen
コール・クリステンセン
【ノースの痩せた赤土を耕して】

「サウスシャックの裏手にコンポストがあるから見てごらん。ミミズを飼育しているんだ。3層の箱に培養土に入れたミミズを飼う。上蓋は雨水が入るようにしておく。雨水がしみ込み土にミミズが排出した糞が汁のように垂れてこのバケツに溜まる。これが土の栄養になるんだ。この液を植物にかけると魔法が起こる。この自然農法はモロカイに昔からあったものだ。糞まで使って、すべてムダにしてないってこと」
農園を説明するときはまじめなコールになる。
「どんなものを栽培しているの?」僕が訊ねた。
「主にフルーツを栽培している。アボカド、ライチー、マンゴ」コールが言う。「弟はソーラー事業を主に展開していて、今は10人のスタッフがいる。」
「これからこの土地で何をしたい?」僕が改めて訊ねた。
「ゆっくりとあくせくしないライフスタイル」
「あなたはパタゴニアのアンバサダーとして活躍していますが、実際パタゴニアからはどんな影響を受けたのですか?」
「イヴォン・シュイナードのシンプルな生き方そのものに大きな影響を受けました」
これを見てくれないか、そう言うとコールは引き出しの奥から黒のシンチラのベストを持って来て見せてくれた。
「買ったのは1996年、漁師をしていた時に買ったものだ。暖かいし、丈夫で長持ちする。パタゴニアのアイテムでこれが一番気に入っている」
「よかったら君のルーツを教えてくれないか」漁師だった彼の成功の背景を知りたくて僕はさらに質問をした。
「僕が生まれたのはオアフ島のカイルアというところ。運転免許を16歳で取ってから、ノースショアにはよくサーフィンに来ていた。誰に教わったわけでもなく、サーフィンは上手い友人の乗り方を見様見まねで覚えていったんだ」